この記事の結論
- 診療前の研修や登録が必要な制度はあるが、要件は薬剤・診療ごとに違う。
- 修了証だけで診療できるとは限らないため、勤務先の手順と最新の公式情報も確認したい。
- オンライン診療に関わる予定があるなら、厚生労働省の研修から確認するとよい。
外来で薬を処方しようとして、院内の手順や製品情報を確認すると、事前の講習や確認テストが必要だと分かることがあります。
医療には、国の指針に基づく研修、製造販売元が設ける適正使用の講習、施設内の手順など、性質の異なる要件があります。「研修を受ければ必ず処方できる」「未受講なら法令上処方できない」と一括りにはできません。
受講するなら、自分が実際に担当する診療から優先するのが安全です。ここでは若手医師が目にしやすい研修を、要件の違いが分かる形で整理します。
受けておきたい研修の一覧
| 研修 | 必要になる場面 | 形式・費用 |
|---|---|---|
| オンライン診療研修 | オンライン診療を行う前の研修 | 厚生労働省の研修サイトで受講 |
| 緊急避妊薬に関する研修 | オンライン診療で緊急避妊薬を扱う場合など | 厚生労働省の案内で対象者・手順を確認 |
| アレルゲン免疫療法eラーニング | 舌下免疫療法薬の適正使用 | 製品ごとの電子添文・適正使用情報を確認 |
| エピペンの講習・登録 | アドレナリン自己注射薬の適正使用 | 製造販売元の最新手順を確認 |
| 緩和ケア研修会(PEACE) | がん診療に携わる医師に求められる修了証 | eラーニング+集合研修 |
| フェンタニル貼付剤(慢性疼痛) | 非がん性慢性疼痛での処方前 | 各製造販売元のeラーニング修了と医師登録が必要 |
| ノルスパンテープ | 変形性関節症・腰痛症の慢性疼痛処方前 | norspan.jpでeラーニング受講・医師登録 |
| メサペイン(メサドン) | 難治性疼痛に使う医療用麻薬の処方前 | e-teiyaku.jpで修了・処方可能医師登録必須 |
※各研修の位置づけは2026年6月29日時点の確認に基づきます。受講形式・費用・登録方法は変わることがあるため、受講前に各実施主体の公式案内を確認してください。
順番に補足します。
① オンライン診療研修
厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」では、オンライン診療を実施する医師は、厚生労働省が定める研修を受講することとされています。受講科目、所要時間、修了証の扱いは研修サイトの最新表示を確認してください。
オンライン診療の求人では修了証の提出を求められることがあります。ただし、修了証は専門資格ではなく、勤務先の診療体制、本人確認、診療計画、対面診療へ切り替える体制なども別に必要です。
緊急避妊薬をオンライン診療で扱う場合は、厚生労働省の指針と研修案内にある追加要件を確認します。対面処方を含むすべての場面を同じ要件で説明できるわけではないため、診療形態と勤務先の運用を分けて確認してください。
研修の受講申込みは厚生労働省のオンライン診療研修サイト(telemed-training.jp)から行います。
② アレルゲン免疫療法(舌下免疫療法)eラーニング
スギ花粉症やダニアレルギーの舌下免疫療法薬では、製品ごとに電子添文、適正使用ガイド、講習・確認テストなどが用意されています。初回投与時の観察や緊急時対応など、eラーニング以外の注意事項もあります。
外来で扱う予定がある場合は、採用薬の電子添文と製造販売元の適正使用情報を確認し、院内の責任者や薬剤部の手順に従って準備してください。受講歴だけで処方可否を判断しないことが大切です。
③ エピペン処方者登録
アナフィラキシー補助治療剤のエピペンには、製造販売元が医療関係者向けの講習・登録手順を案内しています。現行の処方手順は製品の公式情報で確認してください。
食物アレルギーや蜂刺傷の既往がある患者さんを診る可能性がある人は、適応、使用方法、患者・家族への説明まで含めて学んでおくと実務に役立ちます。
④ 緩和ケア研修会(PEACE)
がん等の診療に携わる医師向けの緩和ケア研修会(いわゆるPEACE研修)は、eラーニングと集合研修の組み合わせで修了証が出ます。
これは薬剤の処方登録とは異なる研修です。対象者や修了証が必要になる場面は、勤務先や専門医制度によって異なります。eラーニングだけでは修了にならないため、集合研修の日程も勤務先で確認してください。
eラーニングの受講・日程確認はPEACEプロジェクト公式サイトから行えます。
⑤ その他:メーカー系の講習
ボツリヌス毒素製剤など、製品や適応ごとに適正使用の講習が案内される治療もあります。美容や神経内科などで扱う予定がある人は、求人情報だけで判断せず、電子添文、製造販売元の案内、勤務施設の手順を確認してください。
⑥ オピオイド系鎮痛薬のeラーニング・医師登録
がん疼痛や慢性疼痛の診療でオピオイド系鎮痛薬を扱う場面では、製品ごとに処方前のeラーニング受講・医師登録が求められます。登録なしには処方自体ができない仕組みになっているものもあるため、担当する診療が決まったら早めに手続きを確認しておくと安心です。
フェンタニル貼付剤(デュロテップ®MTパッチ・ワンデュロ®パッチ・フェントス®テープ)
非がん性慢性疼痛の適応でも使用できるフェンタニル貼付剤は、慢性疼痛に処方する際に各製造販売元のeラーニング修了と医師登録が必要です。製品ごとに管理体制が異なるため、担当薬剤師やMR(医薬情報担当者)に確認するか、各社の医療従事者向けサイトで手順を確認してください。
ノルスパン®テープ(ブプレノルフィン)
変形性関節症や腰痛症に伴う慢性疼痛に使われる貼付剤です。処方前にeラーニング受講と医師登録が必要で、登録医師でなければ処方できません。
→ ノルスパンテープ適正使用推進WEBサイト(norspan.jp)
メサペイン®錠(メサドン)
他のオピオイドで十分な鎮痛が得られない難治性疼痛に使われる医療用麻薬です。処方前に「メサペイン適正使用情報サイト」でのeラーニング修了と処方可能医師登録が必須で、登録なしには処方できません。緩和ケア領域に進む予定がある人は早めに確認しておくと役立ちます。
→ メサペイン®適正使用情報サイト(e-teiyaku.jp)
※上記の登録要件・手順は2026年6月29日時点の確認に基づきます。変更の可能性があるため、受講前に各製造販売元または公式サイトで最新情報を確認してください。
当直の空き時間との相性がいい理由
eラーニングは中断・再開できるものもありますが、勤務中に受講してよいか、院内端末を使ってよいかは施設のルールに従います。患者対応や休息を優先し、まとまった空き時間に進めてください。
自分は当直の空き時間に進めた研修もありますが、すべてを先回りして受ける必要はありません。今後担当する診療に必要なものを1つずつ確認する方が、更新や制度変更にも対応しやすいです。
まとめ
- 研修、製品ごとの適正使用手順、施設内ルールは別々に確認する
- オンライン診療を行う予定がある人は、厚生労働省の研修案内を確認する
- 薬剤は電子添文と製造販売元の最新情報を見て、受講歴だけで処方可否を決めない
- PEACEはeラーニングと集合研修の両方の日程を確認する
- オピオイド系鎮痛薬(フェンタニル貼付剤・ノルスパンテープ・メサペイン)は処方前のeラーニングと医師登録が必要で、登録なしでは処方できない
まずは自分が今後担当する診療を1つ選び、厚生労働省、製造販売元、勤務先のどこに公式手順があるか確認してみてください。
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免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。各研修の受講要件・登録方法・費用は実施主体によって変更される場合があります。処方・診療の可否に関わる要件は、必ず各学会・製造販売元・厚生労働省などの公式情報でご確認ください。記載内容は2026年6月29日時点の確認に基づきます。


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